冷めない熱で溶かして、それから。


「昨日は……いや、これまでもぜんぶ、本当にすみませんでした」

 真っ直ぐ私の目を見て話す松野くん。
 一度その瞳に捉えられてしまえば、もう逸らせない。

 加えて頭を下げようとされたため、慌てて止めに入った。
 もう十分、謝罪の気持ちは伝わっている。


「もう大丈夫、だから……‼︎とりあえずここから出よう?」

 いくら朝が早いからといって、駅を利用する人はゼロではない。
 いつ同じ生徒が現れるかわからないため、まずは改札を出て学校に向かうことにした。


「……すみません、周りが見えてなくて」

 慌てる私の気持ちが伝わったのか、しゅんと落ち込んでしまう松野くん。

 うっ、これは胸にくる……すぐに許してしまいそうになるけれど、そうはいかない。

< 103 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop