冷めない熱で溶かして、それから。


「じゃあ私はここで待ってるね」
「わかった!買えたらすぐ向かう!」


 璃花子ちゃんは購買の人混みへと向かっていき、私は少し外れたところで待っていた。

 私も今度、購買のパンを食べたいなと考えているときだった。


「……なあ」
「……え?」


 突然誰かが私の前で立ち止まり、声をかけられる。
 低くて冷たい、どこかで聞いたことがあるような声。

 不思議に思った私も顔をあげると、その人物と真正面から目が合う。


 その人物は、電車で会った男の人だった。
 まさかこんなところで会うなんて。


「やっぱお前か」
「え……と、こんにちは……?」


 同じ学校だから会うこともあるか。
 それよりも、声をかけられたほうがおどろきだ。


「……ふっ」

 戸惑う私を見て、彼が小さく笑った。
 その笑みがやけに色っぽくて、ついドキッとしてしまう。

 怖いイメージがあったけれど、こんなふうに笑ったりするんだ。

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