契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 一流と呼ばれていたはずのブランドであっても経営が立ちゆかなくなって消えてしまったものもないわけではないし、一流同士で業務提携や買収という形で生き残りをかけているところも沢山あるからだ。

 残っていなくては意味がない。
 それはその通りなのである。

「槙野さんからお話を聞いていらっしゃるかもしれないけれど、業務提携を検討しています。提携する以上はお互いにウィンウィンでなければ意味がないわ」

「おっしゃる通りです」
「ケイエムはとても順調です。若年層に強いけれど、キャリア層やセレブ層には弱い。若年層は購買欲がとても強いけれど、飽き性なんです。彼らに飽きられないようにするために数か月でデザインは一新しています」

 数か月でデザインを一新するなど、ミルヴェイユでは考えられないことだった。
 木崎が口にすることは美冬には驚きだし、とても新鮮だ。

「ミルヴェイユの顧客は三世代に渡ってお客様でいてくださっている方もいらっしゃいます。デザインはもちろんシーズンごとでは新しいものを出しますけれど、奇をてらったようなものは販売していません」
 美冬もミルヴェイユについて話す。

「そう、真逆。だからこそ面白いと思いませんか?」
 美冬はドキドキする。確かに面白いと思うからだ。
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