契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「骨折ぅ!? うん、まあ命にかかわることではないのかしら?」
『ええ、全く。ただ、その状況が……』

 取引先とゴルフに行った際に、OBになったボールを取りに行こうとして斜面から転落し、骨折したのだという。

 しかも周りが散々止めたにも関わらず藪の中に入って行ったというのだから、美冬としてはあきれるしかないし、一緒に行ったメンバーに本当に申し訳なさ過ぎる。

 あまりと言えばあまりな状況に美冬は震えが来そうだ。

「お客様は?」
『苦笑でいらっしゃいました』

 椿さんですからねえ、とみんな笑ってくれたらしい。
 気分を害された人はいなかったと聞いて安心した美冬だ。

 祖父はちょっと破天荒な人で、さらに粋な人だ。

 真面目にくそが付くような父と全く気が合わず、どちらかと言うと、祖父とは美冬の方が気が合う。
 こんな祖父ではあったけれど、美冬は祖父のその粋なカッコ良さと、服にかける気持ちが大好きだった。
< 5 / 325 >

この作品をシェア

pagetop