極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 俺を後継者争いから離脱させ、将生を正式な後継者にする。それが脅迫の目的だ。
 将生の派閥に属し、セレブリティクイーンにも同乗している自分が怪しまれるということは当然わかっていると思うが、あれは熱狂的な将生の信奉者だ。捨て身の覚悟で事を起こしたのかもしれない。

「そういえば……昨日だったか一昨日だったか、僕から隠れるようにして、乗客の男と話しているのを見かけた」
「相手がどこのだれかはわかるか?」
「うーん。たしか……イギリスのどこかの会社の役員で、かなりのギャンブル好きだって噂されてた……。セレブリティクイーンのカジノにも入り浸っているらしい。バーテンダーをしていた時、プールバーの客が言ってたような気がする」

 腕時計を見ると、期限の時刻まであと一時間もない。もう十一時を十分以上過ぎていた。

 たとえば俺が海堂ホールディングスの副社長を辞職すると本社に連絡するのは簡単だ。ただ社内の調整には手間取るだろう。その情報をマスコミにリリースするのも時間がかかる。正午までには無理だ。
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