極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 わたしの耳に聞こえるのは、二人の唇がふれあう音だけ。

「もう離さないよ」

 耳もとで、そんな低音のつぶやきが聞こえた気がした。

「なんで、こんな」

 ファーストキスを奪うなんてひどい。
 本物の恋人でもないのに。しかも、見知らぬたくさんの人々が見ている前で。

 抵抗しなければと心のどこかで思うのに、まるで夢の中のような状況に体が痺れて動けない。

 これは、ときめき?
 ……まさか、ね。

 驚きのあまり、感覚が麻痺しているだけだ。豪華客船のラグジュアリーな雰囲気に飲まれて逆らえないだけなんだ。

 本当に、どうしてこんなことになってしまったのだろう……。

 わたしはその後の運命を変えることになった、ほんの数時間前のハプニングを思い起こしていた。

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