極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
「がんばってよかったな」

 セレブリティクイーンはいろんな意味で、わたしの原点だ。クルーズ旅行への思い入れのきっかけとなった船。
 わたしは子供のころの楽しい思い出がずっと忘れられなかった。なぜなら、あれは家族三人で過ごした最後の夏だったから……。





 幼いわたしはボートより大きな船に乗るのが初めてだった。

『うわあ、パパ、すごく大きいね!』

 サウサンプトンの港で最初にセレブリティクイーンを見た時はその巨大さに圧倒された。けれど、乗船すると、中は普通の豪華なホテルのようなかんじだった。
 海の上だからってそんなに揺れるわけでもない。
 おまけに船内は広々としていて、思いきり走っても海に飛び出してしまうことはなさそうだ。

『パパ、お外を見てきてもいい?』
『バルコニーならいいよ。部屋の外は、あとでパパと探検に行こう』
『うん!』
『鞠香ちゃん、ママと手をつないでバルコニーに出ましょう。危ないから手すりには近づかないようにしてね』
『はーい』

 ロンドンで仕事をしていた父と専業主婦の母、そして幼い娘のわたし。
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