極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 その手がゆっくりと下りてきて、指の節でわたしの頬をするっと撫でる。

 ふっと翔一郎さんを見上げて、あれ、と思った。
 翔一郎さんの耳も少し赤くなってる?

 なんだか甘い恋人同士のような雰囲気がどんどん照れくさくなってきて、慌てて別の話題を振ってみた。

「そういえば、さっきの……将生さんのことなんですけど」
「ん?」
「わたしたちが結婚の約束をしてるって誤解させてしまったままでいいんですか? 山内さん――会社の方もいたのに」
「ああ……、あとで事情は説明しておく」

 翔一郎さんがちょっと目をそらした。
 何かすぐに言えないわけでもあるのかな? 仲のよさそうな弟はともかく、山内さんに真相を知られてしまうと、わたしが偽物の婚約者だとばれてしまう可能性があるのかもしれない。
 山内さんは家族じゃなくて将生さんの秘書だものね。

 秘書かあ。あれ、でも。

「翔一郎さんには秘書がついてきていないんですか?」

 なぜ大学生の将生さんに秘書がいて、副社長の翔一郎さんにはいないのかしら。

「まあ、私の場合はもともと休暇だしな。多少仕事を持ちこんでしまっているが」
「お忙しいんですね」
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