離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
ー7ー
「わぁ、美味しそうね!」
午後15時の休憩時間、博美が紙袋の中を見て声を上げる。
「まだオーブンの癖に慣れてなくて試作なんですけど、父が作ってたクロワッサンと同じ感じで作ってみました」
袋の中には凛音が作った小さいクロワッサンがいくつか入っている。
「わざわざお休みの日にありがとう!思い出すわー米田パン、クロワッサンも美味しかったけど、私メロンパンのファンで、何回も買いに行ったわ」
お陰でこんなに丸くなっちゃったわよ、と博美はけらけらと笑う。
「メロンパンは上手く焼けるようになったら持ってきますね」
11月。暁斗と結婚してからもうすぐ半年になろうとしている。
最近の凛音の趣味はパン作りだ。今日凛音は休日だったが、朝から焼いたクロワッサンを届けに病院にやって来ていた。
父の遺品の中にパンのレシピが書かれているノートがあり、それを見ながら作ってみたのだ。
もちろん父のようにはいかなくて、失敗することもある。
でも、今日のように上手く焼きあがると嬉しいし、パンを作っている時間はとにかく無心になれていい。