離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 そして今日はクリスマスイブ、夕食を準備し終えた凛音はソファーで一人夫の帰りを待っていた。

 妊娠してからは暁斗に弁当はいらない、夜食を届けるのも不要、車に乗るな、外出も控えるようにと言われてしまった。

 とは言え、一日中家にいるのも気づまりなので、調子が良い日はパンを焼いて、病院に届けに行ったりしている。暁斗にはあまりいい顔をされないが。

 今まで凛音はこんなに何もしなくていい生活をした事が無かったので戸惑ってしまう。
 もちろん基本的な家事は行っているが、風呂掃除や床掃除など体に負担がかかりそうなものはやらせてもらえない。
 彼が忙しい時間を縫ってやってしまうのだ。
 それも器用なだけあって短時間で綺麗に仕上げてしまう。その上定期的にハウスクリーニングまで入る事になってしまった。

 そこまでしなくてもとやんわりと申し出たら『無理をして何かあったら大変だろう。医者の言う事が聞けないのか』と押し切られてしまう。

 ――もはやこれは医者としての見解では無いのでは?

 その話を美咲や博美にすると、ふたりとも同じように驚いた顔をした後、微苦笑を浮かべて『大事にされ過ぎるのも大変だけど、まあ、うまくやっていくしかないわね』とやんわりと励まされる。
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