離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
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(はぁ……やっぱりどうやり繰りしても足りないんだよなぁ)

 米田(よねだ)凛音は弁当を食べながら心の中で深い溜息を付く。

 凛音が今いるのは勤務先の病院の高層階にある職員用ラウンジ兼食堂だ。明るく開放的な空間は眺めも良く、新宿の高層ビルも見渡せる。
 ここでは定食やカレーを格安で食べる事も出来るし、凛音のように弁当持参で来ても良いことになっている。
 14時過ぎ、ランチには少々遅いが午前の診察業務がほぼ落ち着いている時間帯なので、凛音のようにこのタイミングで食事を取りに来ている職員も多く見られた。
 
凛音はここ九王(くおう)総合病院で働く25歳だ。九王総合病院は東京23区に隣接した市にある病床数400余り、地域医療支援病院にも指定されている大病院だ。
 外科分野、中でも循環器治療では有名で都内外から患者が集まる。

 凛音は事務職として働き始めてから5年目、かなり仕事にもなれて、診療報酬の請求業務から医局関係の書類作成、時には受付業務に入るなど幅広い業務を担当させて貰っている。

 仕事はやりがいがあり、残業も厭わない。寧ろ進んで残業させて欲しいと思っている位だ。なんせ、少しでもお金が欲しい。

「凛音ちゃん、ここいいかい?――凛音ちゃん?」
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