離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 正直、自分は一介の事務員で、波風立てず平和に仕事をしていきたいので、出来れば彼とはお近づきになりたくない。
 
 独身である暁斗は、院内の女性職員から病院出入りの営業担当まで人気がものすごいのだが、彼には結婚を約束した女性がいるらしく、それを理由に女性の誘いの類は全て断っているらしい。

 しかし、そのことを知らない、もしくは知っていても自分に振り向かせようとする女性は多い。
 彼は色んな意味でこの病院の超有名人なのだ。

 実際、こうして同じテーブルでランチを取っているだけで、他の女性職員から『何でアンタが剣持先生とランチ取ってるの』という厳しい視線がグサグサ刺さってくる気がして落ち着かない。

 暁斗も食堂に来る度によく知りもしない職員と同席させられるのも嫌だろう。
 これは、さっさと自分の弁当を食べ終えて席を立つしかないと、凛音は食べるスピードを上げる。   

 そもそも昨日の残り物、というか、あえて残した夕食のおかずを詰めただけの質素な弁当の中身を見られたら恥ずかしいのもある。

「相変わらずアッキーは愛想が無いなぁ、ていうか、ちゃんと味わって食べなよ」

 暁斗もさっさと席を立ちたいのか黙ってどんどんカレーを平らげていく。
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