クローバー


私はそいつを引っ張り人気のない所へと連れていく。


そしてそいつを壁に押しやり睨みあげる。
いわゆる壁ドンだ。こいつすぐ逃げるからな。


「珍しく積極的だね、クロさん。」


ニヤニヤしながら私を見てくるこいつ。


「で?なんでいるんだよ"月夜"」


「あれ?クロさん怒ってる?」


「あぁ、怒ってる。てかここではクロさんって呼ばないで。」


「ごめんって文乃さん。文乃さんの体操服姿が見たかったたんだよー。許して。」


私の腰に手をまきつけ、甘えたような声を出してくる月夜。こうすれば許して貰えるって分かってるからだ。


でも今日は許さない。


「俺がいたから借り物競争ゴール出来たんだしね?」


「いやだ…。」


覗き込んでくる月夜の顔と反対方向に顔をプイッと向ける。


「今度文乃さんが好きないちごのショート奢るから。ね?」


「……2個。」


月夜はその言葉に目をパチパチさせ、嬉しそうに笑った。


「いいよ。2個でも、3個でも買ってあげる。」


しょうがない。今日はこれで許してあげよう。


「てか月夜はいつから居たの?」


「え?初めからだけど?」


「初めから?!」


「そうだよ。だから、文乃さんがあの兄弟にサンドイッチされてるのも見てたし、変な金髪とじゃれ合ってるのも見てたし、瑠衣とかいうやつに膝枕してるのも見た。」


後半になるにつれて笑顔がどんどん黒くなっていく月夜。



< 92 / 117 >

この作品をシェア

pagetop