背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜
 部活が終わり、一花は図書館に向かっていた。

 柴田から『千葉は入室禁止にしたから、渡したかったら図書館に行くように!』と以前言われ、それからは部活の後に尚政を探しに行くようになった。他の部員の手前、一花だけ特別扱いするのは良くないという、柴田なりの配慮だった。

 図書館に入り、まずは一階を見て回る。尚政は日によって本を読んでいたり、勉強をしていたりと、行動が読めなかった。

 すると閲覧スペースで尚政を見つける。一花はゆっくり近寄ると、尚政の肩をトントンと叩く。気付いた尚政が笑顔で迎えてくれた。

「お待たせしました」

 一花が小声で言うと、尚政は本を閉じて立ち上がる。にっこり笑って一花の頭に手を載せると、
「片付けてくるから待ってて」
と本棚へと歩いて行った。

 一花は尚政が座っていた椅子に座る。先輩の温もりを感じるなんて言ったら変態かな?

 尚政は普段、授業が終わると真っ直ぐ帰宅してしまう。従兄弟の家に入り浸ってると言っていたが、一花が誘った日だけはこうして図書館で待っていてくれるのだ。

「じゃあ行こうか」

 戻ってきた尚政に言われ、一花は立ち上がる。尚政の後ろを歩きながら、バレないようにそっと彼のブレザーの裾を掴む。

 もうすぐ先輩は高校を卒業してしまう。エスカレーターで大学に進学するとは言っても、場所が違うから、こうして同じ敷地内で会うことは出来なくなるのが寂しかった。

 ただでさえ中等部と高等部では会いにくいのに……先輩がもっと遠くに行ってしまう。
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