背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜

君を知りたい

 一花は小さい頃からお菓子作りが好きだった。最初に作ったのはクッキーで、みんなが美味しいと言って食べてくれたことを今も覚えている。

 それからいろいろ作り始め、中学に入ってからは念願の調理部に入った。

 海鵬学院の調理部は、中等部と高等部合わせて二十人の部員がおり、部長は柴田達也(しばたたつや)という高等部三年生の男子だった。黒の短髪にメガネと、普通に見たら科学部などが似合う。

 柴田はとにかく料理が好きな料理男子で、そのため女子からは『自分より料理上手な男なんて』と敬遠されがちだったが、調理部の中では絶対的信頼を得ている。

 週二回の部活は、月曜日に調理予定や材料について話し合い、木曜日に実践するという流れになっていた。

 今日は月曜日のため、部員が集まり話し合いをする日だった。

「最近食事系が多かったから、久しぶりにお菓子でも作ろうか」
「わ〜! 賛成!」

 部員たちが歓声をあげる。

「じゃあ何がいいか言ってみて。彼氏の好みじゃなくて、自分の作りたいものを言えよ」

 そんなふうに笑いをとりながらも話を進めていく。
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