背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜

* * * *

 楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。でも先輩は忙しそうだし、次の約束は出来なかった。

「また連絡するよ」
「ん……期待しないで待ってる」

 目と目が合うが、尚政はそのまま手を離そうとした。しかし一花はそうはさせなかった。

「挨拶でしょ?」

 尚政は困ったように笑い、一花の唇に軽くキスをした。

「一花さ……もし勉強会とかでいい人がいたら、俺のことは気にしなくていいから、自分の幸せのために時間を使っていいんだからね……」

 尚政の言葉に唖然とし、一花は固まった。

「じゃあね」

 走り去る尚政を止めることも出来なかった。

 突き放された……。二人の関係は上手くいっていると思っていたけど、そう思っていたのは私だけだったみたい。

 最初に感じた嫌な予感はこれだったのかな。

 溢れ出る涙を止めることができず、一花はその場に座り込んでしばらく泣き続けた。
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