背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜

誤解

 あれから一週間が過ぎたが、尚政はやる気が起きず、体調不良と嘘をついて部屋にこもっていた。

 メールをしないこと、一花はどう思ってるかな……。俺が突き放したことで、学校の友達と上手く行ったりしてるのだろうか。

 裏切られたわけじゃない。だって俺から突き放したんだから。……なのにどうしてこんなに苦しいんだろう。一花が誰かのものになると考えるだけで息が出来ない。

 一花といると、ネガティヴに捉えてることが少なくなっていた。きっと一緒にいるだけで楽しかったから。

 一花も同じことを言ってくれていたのにな……俺は自分から手放してしまった。

 ベッドに倒れ込んだまま、ただただ時計の音に耳を澄ませていた。

 その時だった。尚政の携帯の着信音が鳴り響き、尚政は驚いて飛び上がった。

『着信 一花』

 名前を見て喜びと不安が押し寄せる。どうしよう、ちゃんと話せるだろうか……。それともこのまま無視するか?

 スマホを手に持ちしばらく画面を見ていたが、意を決し画面をスライドさせる。

「もしもし……」
「先輩? いまどこ?」
「……家」
「わかった。じゃあ今すぐあの公園のベンチまで来て」
「なんで……」
「会いたいから。来るまで待ってるからね」

 そして切れた。何も言わせてもらえなかった……でも、(かえ)ってそれが良かったのかもしれない。

 尚政はすぐに着替えると、あの公園に向かって自転車を走らせた。

 会いたいから会いにいく。なんて簡単な理由なんだろう。
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