捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
こんな人が本当に私の旦那様でいいのかな。
私なんてただの平凡な一般人なのに。

「そうだ、これ」

さりげなく和家さんが取り出したのは、指環のケースだった。

「僕の印を李依に着けてもいいか」

レンズの向こうから彼が真っ直ぐに私を見ている。
とても甘く蕩ける瞳に、私も自然と笑顔になった。

「……はい」

「ありがとう」

もそもそと起き上がったら、手を貸してくれた。
ケースから指環を出し、左手薬指を取ってそれを嵌めてくれる。

「僕にも李依の印をつけくれるか」

「……はい」

私も同じように彼の左手薬指に指環を嵌めた。

「僕たちはこれで夫婦だな」

和家さんがそっと私を抱き締める。
私も手を伸ばして抱き締め返した。

「そうですね」

和家さんの腕の中、安心する。
彼に抱かれたあの夜もそうだった。
熱いのにとても優しくて。
だからすべてを、彼に預けられた。
これが私のものだなんて、まだ信じられない。
< 76 / 118 >

この作品をシェア

pagetop