捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
最終章 三日月は満ちて満月になる
悠将さんが帰ってくるまでの僅かな時間で、黙々と荷物の整理をする。

「マフラー、編み上がったのに」

編んでいる間ずっと、喜んでくれる顔ばかり浮かんでいた。
普通じゃないほど喜んで、このまま金庫に入れて保管しておく!
とかいうところまで想像できたのに、それが見られないのは残念だ。
このマフラーはあとで処分しよう。

予定どおり、ジャニスさんと話をした翌々日に悠将さんが帰ってきた。

「ただい、ま……」

私の顔を見た途端、みるみる彼の顔が曇っていく。

「李依?
なにかあったのか?」

そっと悠将さんの手が、心配そうに私の頬に触れた。
……ああ。
ダメだな、私。
ちゃんと笑ってお別れしようって決めていたのに。

「悠将……和家、さん」

「李依?」

名字で呼ばれ、眼鏡の奥で不安そうに瞳が揺れる。

「お世話になりました。
私と別れてください」

自分の左手薬指から指環を外し、その手を取ってのせた。

「李依、なにを言っているんだ?」
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