若頭、今日もお嬢を溺愛する
新年
20XX年、元旦の朝。

鶴来組の朝は、慌ただしい。
「んんっ…」
杏子が目を覚ます。

「あ…起き…た…かな?」
「ん………ん?
━━━━━!!!?」
「おはようございます!杏ちゃん!」
ガバッと起き上がる、杏子。

それもそのはず、鶴来組・若頭の雷十がベット脇に両肘をついて見つめていたからだ。

「雷十!!何故に!いる!?」

「えーー!!杏ちゃんの寝顔可愛いので、ひたすら見てました。ほんっと、食べたい位に可愛いですね!」
「てか!起こせよ、変態!!」

「嫌ですよ!!こんな可愛い杏ちゃんの寝顔、ギリギリまで見ないともったいないですもん!
そして、ちゃーんと!写真も撮りました!」
「はい?」

「ほらっ!!可愛いでしょ?
なんでこんな、可愛いんですか?
杏ちゃんって、もしかして!転生でもしてきたお姫様なんじゃないですか?
まさに!姫君!!
可愛いーーーー!!」
雷十もベットに上がり、杏子の横に座る。
そしてスマホの画面を見せてくる。
何十……いや、何百枚の画像があり“全て”杏子だ。

「………キモいよ…バカ!」
この変人なバカっぽい男は、杏子の祖父のヤクザ組織の若頭である。

杏子の事を溺愛している、世話係だ。
そして………
「杏ちゃん、おはようのチューしましょ?」

杏子の彼氏でもある。

杏子を両足で挟み、杏子の頬を包み込んだ雷十の顔が近づき……
「うん…」
チュッと音がして、口唇が離れた。

「フフ…新年一発目のチューですね!!
それに杏ちゃんの口唇、柔らかくて気持ちいいです!
もう一回しましょ?」
杏子の口唇をなぞりながら言った。
「も…やだ!」
「えーー!!どうしてですか?」
「これ以上すると……」
「ん?」
「なんか、身体変になる……」

「フフ…言ってるじゃないですか。
杏ちゃんが受け入れてくれるなら、いつでも何処ででも抱きますよって!
変になっていいんですよ?
俺が、ぜーんぶ受け止めますから!」
雷十が頭をポンポンと撫でる。

「でも、怖い……」
「…………そうですか?
だったら、いくらでも待ちます!杏ちゃんが受け入れてくれるまで、何年でも何十年でも!」
「ごめんね…」
「こらっ!謝らないって約束ですよ?
杏ちゃんは何も、悪くないんですから!」

「雷十、優しいね」
「当たり前ですよ?
俺は、杏ちゃんの彼氏で、世話係で、騎士で、王子なんですから!杏ちゃん、大ー好きですよ!」

「ねぇ」
「はい」
「普通は、するんだよね?」
「はい?何がでしょう?」
「笹美がね、言ってたの」
「はい」
「あんた達、ひとつ屋根の下に住んでてヤらないの!?って!それに、部屋も別だから“変”って!」

「そうですね…難しいですね。
俺は杏ちゃんを抱きたいし、一緒に寝たいし、ずっとくっついてたいです。四六時中、離れたくないです。
でも、無理矢理はしたくありません。
恋人はこうあるべきだとかは、ないですよ?
これが、俺と杏ちゃんの愛の形です!」

「そっか!わかった!
じゃあ…エッチはまだ怖いから、もう少し待って!
キスはいいよ」
そう言って微笑んだ杏子。
雷十も“はい!!”と言って、心底嬉しそうに微笑んだ。
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