若頭、今日もお嬢を溺愛する
卒業
「久しぶりだね!杏子ちゃん」
「そうだね、虎太郎くん!バイトは、大変?」
「ううん、結構楽しいよ!」

今日はいよいよ、杏子達の高校の卒業式だ。

久しぶりに四人揃い、杏子は嬉しそうに微笑んでいた。
「でも、何のバイト?」
「カフェ」
「へぇー!」
「式が終わったら、みんなで行かない?」
「え?あ、行きたいな……」

「みんなー、整列してー!」

そして…………卒業式が滞りなく進み、終わった。

先生に最後の挨拶をして、杏子達はゆっくり学校を出た。
「フフ……二人共、ボタンないし(笑)」
笹美が笑いながら言った。

「ほんとだ!
でも笹美、ヤキモチとかやかないの?」
杏子が昴の学ランを見て言った。

「別にぃ!」
「杏子ちゃんも、そう思うだろ?」
「昴が落ち込んでる……(笑)」
隣で虎太郎が笑っていた。

「ボタンが全部ないなんて、二人くらいよねー?凄っ!!」
笹美がまだ笑っている。

「袖のボタンはあるよ。笹美、いる?」
「は?」
「俺も、杏子ちゃんいる?」
「え?」

「「じゃあ…記念に…」」
杏子と笹美は、昴と虎太郎から袖のボタンを一つずつ受け取った。

「鶴来さん!!」
「え?手毬くん!」
「卒業、おめでとう!」
「フフ…手毬くんも!」

「誰?このイケメン」
「だな。イケメン…」
「てか、こいつ…ボタン、全部ない……」

「あ、手毬くん、笹美と昴くんと虎太郎くんだよ!」
「で、こっちが手毬くん!隣のクラスの」
「よろしく!
………って今更だけど…」

「杏子、いつの間に知り合ったの?
てか、いつ学校の子と会えたの?」
「あ、ほら!
登校日の手紙……」
笹美に耳打ちする、杏子。

「手紙!!」
「ちょっ…声が大きいよ!」
「あんた、手紙くん!!」
「は?手紙じゃなくて、手毬だよ?僕」
「笹美、何言ってんだよ…!?」
「あ、いや…
てか!杏子、あれから読んで、会ったってこと?」

「うん」
「雷十さんは?」
「え?」
「雷十さんはどうやって切り抜けたの?」
「家の前まで、手毬くんが来てくれたの」

「てか、何の話?」
昴と虎太郎が不思議そうだ。

「とにかく、カフェ行こうよ。
手紙…じゃなくて、手毬くんも一緒にどう?」
笹美が言った。
「うん」

門に向かうと、人集りができていた。
「なんだ?」
「なんだろう?」

「━━━━━!!!?」
高級車が門の前に止まっていた。
杏子は、フリーズする。

運転席から瓜生が出てきて、後部座席のドアを開けると大きな花束を持った雷十が出てきたからだ。

その姿が、あまりにも綺麗で…………
誰もが見惚れていた。

雷十が杏子の方にゆっくり向かってくる。
コツコツと足音をさせ、全てがスローに感じるくらい綺麗で杏子はもちろん、誰も動けない。

「杏ちゃん、卒業おめでとうございます!」
「…………雷十、ありがとう!」
「はい。大きな花束です!!」
「え?」
「杏ちゃん、言ってましたよね?
卒業式に、大きな花束を持ってお迎えに来てって!」
「雷十、覚えててくれたの?」
「当たり前ですよ?
杏ちゃんが言ったことは、全部覚えてます!」

「ありがとう!」
お互い微笑み合った。
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