不毛な恋模様〜傷付いた二人は、輝く夜空の下にて熱く結ばれる〜
同居
「俺の家、会社から割と近いし、2LDKだから紗世ちゃんの部屋も作れると思うんだ」

 家をどうするか話し合い、紗世が波斗の部屋に引越すことになった。

 元々部屋が狭くて荷物も置けなかったので、紗世からすれば通勤時間が短くなるだけで、それほどの変化はなかった。

「紗世ちゃんは何か希望はある?」
「私は別に自分の部屋はいらないかな。その代わりリビングでくつろぐけど」
「……そうなの?」
「うん、就職する時に一人暮らしを始めたから、ほとんどの荷物を実家に置いてあるの。だから本棚の本と服くらいかなぁ。先輩は?」
「俺?」
「だって先輩の家じゃない。希望はある?」
「強いて言えば……一緒に寝たい」
「寝たい……?」
「違う違う! そういう意味じゃなくって、寝室を一緒にしたいってこと!」
「慌てなくても、それくらいわかりますよ。じゃあ少し大きめのベッドを買いましょうか?」
「さ、紗世ちゃん!」

 そんなこともあり、紗世が引越す頃にはクイーンサイズのベッドが寝室に届いていた。

「なんか不思議ですね。先輩と一緒に暮らす事になるなんて……」

 荷物を運びながら紗世は呟いた。他人と一緒に暮らすってどういう感じなのかな。

「嫌になったら言ってね。元々俺のお願いでこうなったわけだし……」

 波斗は少し申し訳なさそうに言った。

「でも私ね、先輩との生活をちょっと楽しみにしてるの。先輩といると癒されるし、一日一緒にいても飽きないし。先輩も無理だって思ったら、遠慮なく言ってね」
「うん……お互いさ、初めての共同生活だし、無理せず過ごしていこうね」
「ですね」
「ところで通勤はどうする? 別々に行く?」
「私たちが仲良いのは知られているし、一緒に行っても問題ないような気もするけど……先輩は気になる?」
「いや、むしろ一緒に行きたいな」

 ストレートな波斗があまりにかわいくて、紗世は我慢出来ずに笑い出す。

「最近の先輩、かなり甘えたさんですね」
「えっ、そうかな……?」
「そういうの、結構好きかも」

 紗世の思いがけない反応に、波斗は喜びを隠せなかった。
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