不毛な恋模様〜傷付いた二人は、輝く夜空の下にて熱く結ばれる〜
甘い夜
 波斗が残業のため、紗世は先に夕食を済ませて、彼の帰りを待っていた。

 洗い物をしていると、ドアの開く音がする。

「ただいま〜」

 その言葉とともに、疲れた様子の波斗が部屋に入ってくる。

「おかえり。遅くまでお疲れ様。今ご飯温めちゃうね」
「うん、ありがとう」

 電子レンジで温め、テーブルに並べたところで、部屋着になった波斗が戻ってきた。

「今日はハンバーグ? 美味しそう。いただきまーす!」
「どうぞ召し上がれ〜。じゃあその間に私はお風呂をいただくね」
「うん、ごゆっくり」

 こんなやりとりが当たり前になってきて三ヶ月が過ぎようとしていた。

 紗世は二人の生活を楽しみつつも、波斗の真意が分からずモヤモヤしていた。

 もはやこれは慰めの範囲を超えている気がする。先輩の態度が私だけ特別なのはわかってる。きっと私に好意を持ってくれてるとも思う。ただその好意が、恋愛なのか友情なのかはわからなかった。たぶん先輩自身もわかっていないんだと思うけど。

 いつか私を好きにさせて、ちゃんと言わせるつもりでいたが、どんどん自信がなくなってくる。どうしたら気付かせることができるのかな。

 お風呂から上がると、波斗がソファに座ってスマホを見ている。紗世は後ろから近付き、波斗の首に腕を回す。

「メール?」

 波斗はスマホの画面をパッと消す。

「うん、そう。じゃあ俺も入ってこようかな」

 波斗は紗世の頭を撫でてから腕を外すと浴室に向かう。

 あからさまだったかな。

「アプローチするって難しい……」

 千鶴ちゃんの時は見ているだけだったから、何も行動を起こさなかった。けど欲しい人がいると、こんなにも悩むのね。

 そういえば千鶴ちゃんも大和先輩のことで悩んで辛そうな時があった。私ならそんなことしないのにって思ったけど、そうじゃなかったのかもしれない。千鶴ちゃんも大和先輩を振り向かせるために苦しい思いをしていたのかもしれない。
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