こんなにも愛しているのに〜私はましろ

ましろの想い

「ちょっと一人になりたいから、陸はしばらく、、、私の考えが
まとまるまで、ここを出ていってくれる?」

私は陸に言った。
お願いしたのではなく、そう言った。

「出て行くって、、、どこへ行ったら。。。」

「困らないくらいの着替えを持って、出て行って。陸が行けるところへ。
陸が出ていけないのなら、私が出て行くから。」

私が陸に行き先を言わずに出ていく、、そのつもりだったが、
今の陸にとってそれは恐怖にしかならないので、言葉を飲み込んだ。

「わかった、、、達のところへ行く。もちろん、達と遊びには出かけない。
達も曽根田さんに振られて、おとなしいから、、、

病院へは行く?」

「もちろん。職場放棄は絶対にできないでしょう。」

「わかった。
俺は絶対に別れたくない。ましろからのどんな条件でも飲むから、、、
いやその前に自分の行いを改めるから、、、そこを信じてほしい。」

陸は肩を落としてそう言った。
小さなバッグ一つで出て行ったのは、そんなに長く家を不在にはしないぞと
いう、陸の意思表示だろう。

私も早く自分を落ち着かせたかった。
研修終了まで後わずか。
結婚式まで後わずか。

どうするのか。
どうしたいのか。

母と話がしたくなった。

連絡をして、うちに来てもらうことにした。
実家に帰るのは、双子の弟達が小さくて、ゆっくりと話もできないと言うこともあり
母に来てもらえるように頼んだのだ。

幸いにもこの頃、父は独立してコンサル業を始めていたので、
ちょっとした時間をやりくりできる状況にあった。
きっといつもではない、母と話したいという娘が心配で、父は母にあれこれと尋ねるだろうが、母がうまく父を宥めてくれると思う。

私の今の気持ちを、母に話したかった。
きっと、わかってくれると思うから、、、



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