こんなにも愛しているのに〜私はましろ

衝撃3

あれは
1学期の定期考査が終わる前日だった。
あと1日頑張れば、夏休みを待つだけだ。
クラス委員とも、おさらばできる。
そんな日のことだった。

クラス委員の仕事も嫌いではなかったが、あの二人と
関わり合いになるのが嫌だっただけだ。

父のことに繋がることを思い出すのが嫌だったのだ。
今は
父はシンガポールにいて、父不在の暮らしは私にとって
とても楽だった。
緊張をしないで済む。
父を嫌いだという自分を四六時中感じないで済む。

こうやって
学校に来て、友人らしき子もでき、部活、、、書道部で
無心に墨をすったり、一心に字を書いていたら、余計なことを考えなくて
時間があっという間に過ぎていく。
下校するときに、自分から墨の匂いがすることが
好きだった。

母も、私が年齢相応に学校生活を楽しんでいることに、
安堵した様子を見せる。
帰宅して、食事の時などはうるさいくらいに、学校の様子などを
尋ねてくる。

きっと
一気に変わった環境に、私の心をとても心配しているのだろう。
いつも学校の様子などを尋ねる母が少々煩わしてくても、
母の気持ちがわかるので、邪険にはできなかった。

その母は
時々、空を見上げてはじっと物思いに耽っている時がある。
間違いなく、父のことを考えているのだろう。

そういうときは
私は気配を消して、部屋へ引っ込む。
そして
考える。

母は父とやり直したかったのに
私が邪魔をしたのではないだろうか。
あんな醜態を晒した父なのに、女としての母の気持ちは別にあるのでは。
理恵おばさんが言っていた通りに。

私が母に父のことを言わなければ
父と別れてと言わなければ、、、

そもそも

あの日あの道を通らなければ、、、
こんなことにはならなかったのに。
手塚君たちの悪戯に乗せられて、、、と
彼らへの恨みを募らせる。

人を恨むって、、、
自分のメンタルも削がれて、きつい。
いつまでも
そこから抜けきれない自分にほとほと嫌気がさす。

母にはもちろん言わなかったが
私の日々は、こういった思いに支配をされていた。

そんなときに起きた出来事だ。

試験を終わらせて帰る私の前に、
あの悪夢の女子たちが再び現れた。

校門のところにいたのだ。
下校途中の生徒たちは、遠巻きにその派手な女子たちを見ている。
視線を送ってくる男子には、媚びを含んだ視線を返し、
好奇心いっぱいの女子からの視線には、威嚇するような視線を返す。

見事しか言いようがない。

私はそちらを見ないように、彼女たちから一番遠いであろうところを選んで
校門を出た。
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