こんなにも愛しているのに〜私はましろ

違和感と日常 3

巻き込まないでとは言いながらも、高校の初めの時から今回のことまで、
決して楽しいとは言えない彼らとの関わり合いに
私の気持ちは自分の両親のこともあり、漣のようだったた苛立ちが一気に
大波のような激しさになっていった。

「ただいま。
遅くなってごめんね。
あれ、ご飯は、、、?
ましろも遅くなった?」

私より遅くに帰ってきた母が、先に帰宅した方がご飯を炊くという約束が
できていないことに、私も遅くに帰ってきたのか、と言った。
別に、咎めているわけでもなんでもなく、できていなかったら、できていないで
それはそれで仕方がないね、自分もそういうことがあるからくらいの
日常の会話なのに、今の私にはその母の言い方に、神経を逆撫でされた。

「私はご飯を炊くために早く帰っているわけじゃない。」

自分でも驚くほどの嫌味な言葉が口をついて出た。

「ましろ、、、」

母は驚いただろう。
私の初めての反抗に。

「どうしたの?」

私の異変に気遣う。

「お母さんはいったいどうしたいの?
お父さんとどうしたいの?
私のために離婚をしたいの?したくないの?

私のために私と一緒に日本に残っているの?
私はお父さんとお母さんと一緒じゃなくても暮らしていける。」

真っ直ぐに母を見て、一気に言った私に母は息を飲んだ。

「小さい頃からそうだった。。。
お母さんは私なんか見ていない。

廉がお腹にいるときも、廉が亡くなった時も、自分の不幸しか見ていない。
私が弱っていくお母さんを見て、どう思ったかとか、廉が亡くなったのが
私のせいかもしれないって、毎晩泣いていた時も、お母さんは
自分ばかりを見て、お父さんが側にいてくれることだけを思って、
側にいた私のことなんか、これっぽっちも気にかけてくれなかった。」

「ましろ、、、」

そう。
私が生まれて初めて経験した、身内を亡くす悲しみを知った時
我が子を亡くした母の瞳には、父と廉しか写っていなかった。
きっと
醜い思いを抱いた私への罰だと思って、私は我慢をして泣いていた。
私の思いを知った、母方の祖父母に慰められてようやっと
自分を取り戻したのだが、祖父母は我が子を亡くすという
大きな悲しみを抱えた母に、私が抱いた歪んだ思いを伝えなかったようだ。

その時は
私は母に嫌われるようなことを思った自分を、知られなくてよかったと思ったが
本当は、ましろはなにも悪くないのよ、と言って母に抱きしめて欲しかった
のではなかったろうかと、今になって思う。
< 49 / 117 >

この作品をシェア

pagetop