こんなにも愛しているのに〜私はましろ

初めての哀しみ

私は父のことが嫌いではなかった。

仕事に忙しく
家にいる父は
どこか
気が抜けたようにしていることも多かったが
これが素の父の姿だったろう。

その反面
仕事モードへのスイッチが入っている父は
子供の私から見ても
素敵だ。
と思えるほど全身から家での父とは違う
オーラが出ていた。

『ましろちゃんのパパとママは、かっこいいねぇ。

パパはイケメンだし、ママは美人だし。』

幼稚園の頃から、
周りのクラスメートから言われていた
自慢の両親だった。

日頃は忙しいのに
幼稚園の父親参加の行事には
仕事の合間を縫って
必ず参加してくれていた。

父と手を繋ぐことが
父に抱っこしてもらうことが
父に肩車してもらうことが

すべてが
うれしいことで
幸せなことだった。

特別に甘やかされたとは思っていないが、
父も母も私の話を
いつもきちんと聞いてくれた。

私が何を望んでいるのか。

何で
うれしいのか。
何で
悲しいのか。

私はそんな両親の私に対する接し方で
親から愛されているという
安心感をもらっていたような気がする。

しかしあの日から
ちょっと
私と両親、
父と、母と、
少しずつ
歯車が噛み合わなくなって、、、

ちょうど
オルゴールの一つの釘が潰れて
音が飛んでしまうような
どこか
居心地の悪さを感じるような時が
度々があった。


あの時
私の弟
廉が
この世に生を受けることができなかった時。

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