佐藤さん家のふたりとわたしと。
奏志の部活終わりを待って、3人で歩いて帰る帰り道。

こわばる顔を必死に緩めながら帰った。不自然に口角を上げながら話すのは、筋肉痛になるんじゃないかって思った。

「じゃあね、ばいばい!」

「「ばいばい!」」

家の前、2人に別れを告げて鞄からごそごそと鍵を探した。

「おい、芽衣!」

「ん?」

ぺしっ、鈍い音がした。

「痛っ!」

振り向いた瞬間、いきなりデコピンをかまされた。奏志のデコピンは力強くて痛い。

「いったいなー!何すんの!?」

さすさすとおでこをなでながら抑えた。

真っ直ぐ見つめる奏志と目が合った。

じっと、見つめて…

「…何か言ってよ!」

「言うことねーよ」

「じゃあなんでデコピンしたの!?」

「お前があっからさまに俺を避けてるからだろ」

…う、言い返せない。

さりげなく避けるつもりが経験のなさからがっつり避けてしまっていたのはわかってる。

「か、考えてたの!好きだって言われて(小声)、なんかいろいろ考えてたの!今日だって全然眠れなかったんだもん!」

おでこの痛みに涙目になりながら答える。

「…だってそんな風に思ったことなかったし、急に言われてどうしたらいいのかって、もしかして冗談なのかもとかも…っ」

「冗談であんなこと言うかよ!」

はーぁ、と奏志が頭を掻いた。

「あ、お前に言うことあったわ」

「こっ、今度は何!?」


「俺と付き合ってほしい」


じっと私を見てる。

凛とした瞳、一切逸らさない私だけを見てる。

「…えっと」

答え方がわからなくて俯いてしまった。

「別に今答えろとか思ってねーから」

「………。」

「…ちゃんと答えが出たら聞かせて」

ぽんっと俯く私の頭を撫でた。

お兄ちゃんとは違う手の感触。

憎まれ口叩くことも多いけど、本当は優しいこともわかってる。

「…聞かせてだなんて言い方したことないじゃん」

奏志が去って行った家の前、1人呟いた。
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