佐藤さん家のふたりとわたしと。
3人で歩いて家まで帰った。
今日も寒いねって言いながら。
会話はずっと上の空だった。

「じゃあ…今日は本当にごめんね、ばいばい!」

家の前、精一杯の作り笑顔で2人に手を振る。

「「大丈夫か??」」

「うん、大丈夫。ちゃんとお兄ちゃんに謝るから」

ゆっくりドアを開けて家の中に入った。

いつも静かな家だとは思ってたけど、こんなに張り詰めたような静かさは初めてだった。

「ただいま」

「…おかえり」

お兄ちゃんがソファーに座ってテレビを見てる。特に反応もせず、表情も変えない。

「お兄ちゃん…、ごめんなさい」

私の方を見てはくれなかったけど。

「…別に、バイトを辞めろとかも言わないよ」

変わらずの淡々とした口調で、話し方も本当に静かだ。

「芽衣が俺に反対してでもほしいものがあるなら、勝手にすればいい。ただ約束を破ったことだけは忘れないで」

「…うん」

少しでも俯いたら涙がこぼれそうで、駆け足で階段を上って自分の部屋に入った。

こんなつもりじゃなかったのにな。
今日は良い日だったはずなのに。

バタンっと部屋のドアを閉めた瞬間、ぽろっと涙が流れ落ちた。
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