じゃんけんぽん
でも、例の“その子”はすぐに発見できた。

朝っぱらから落ち着きなく、私の席周辺を彷徨いている子がいたのだ。

それが、彼…来海 理生(くるみ りお)。

お礼を言おうもんなら「知らない」の一点張りで、照れ屋な本人からの供述は得られなかったけれど、絶対に来海だって確信できた。

なんせコメント欄に記された文字が、お世辞にも綺麗とは言い難い、ある意味個性的な文字だったから。

どうしてすぐに気付かなかったのかが不思議なくらい特徴的でアーティスティックな文字なのだから、言い逃れはできまい。

来海はそれから私が新たなクラスに馴染めるまでの間、ことあるごとに自分の遊びたいことはそっちのけで私の側に居てくれた。

ぶっきらぼうでそっけない口調。

顔を合わせれば、ちょっとしたことでからかってくる。

だけど、その奥に確かに存在する、なによりも温かい心に一気に惹かれていった。

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