短編集-Various love-
ガーベラ-lost love-
私は植える。ガーベラの花を。今目の前にある空間に。
目の前の空間とは、見える範囲と言うこと。それは、私を中心に、半径5メートルくらいの範囲だ。それより外は、濃い霧がかかっている。何も見えない。
太陽の光りは薄く届くので、昼か夜かは判別が着く。

目が覚めるとすぐ、ガーベラを植える。目の前にある空間に。
種は無数にある。腹は減らない。目が覚めてから暗くなるまで、ただひたすらガーベラを植える。雨は降らない。風は時々吹く。大地はいつも少し揺れている。火を感じることは少ない。

私は植える。ガーベラの花を。今目の前にある空間に。そこに植え尽くすと移動する。そんなに沢山じゃない。すぐ隣の空間だ。そうしてまた、ガーベラを植える。私は疲れない。眠くもならない。いつからだろう?疲れる、眠くなる、腹が減るという言葉は滅び、昔の物となった。

私は植える。ガーベラの花を。あの子の誕生花。沢山の時間が流れても、忘れることができないあの子。ある日突然、消えたあの子。あの子を忘れらない。忘れたくない。だから植える。ガーベラの花を。


私達は出会い、恋をした。一緒に過ごす時間は、私達に愛を教えてくれた。
あの子は私に幸せをくれた。この幸せが永遠に続けばいいと思った。
そう思っていた矢先、永久機関が完成した。
それまでは、なんだったか、人間の核となる、あの、内臓?臓器?そうだ、思い出した。心臓だ。
その心臓に代わる機関が開発され、他の臓器に代わるものも次々に出てきた。全てを永久機関に代えれば、永遠の命を手に入れることができた。
それから更に数年。全ての臓器を取り替える必要がない永久機関が完成した。
私はそれを飲み干した。そして、半永久的に生きられる身体になった。
あの子にもすすめたが、断られた。
「限りある命だからこそ、意味があるのです。」
あの子と一緒にいられないのなら、こんな身体になった意味はなかった。

まただ。
また意味のないことを思い出していた。


半永久的に生きられる身体になったはずの人間が沢山いたはずなのに、いつのまにか誰にも会わなくなったこの世界で
私は植える。ガーベラの花を。今目の前にある空間に。
目の前の空間とは、見える範囲と言うこと。それは、私を中心に、半径5メートルくらいの範囲だ。それより外は、濃い霧がかかって








いるはずだった。
はずなのに、いきなり視界が広くなった。
なんだこれ?
見渡す限り一面にガーベラの花が咲いている。
あの子の花だ。
どこまでも見渡せる大地。その全てにガーベラの花が見える。
そうか。世界全てに植え尽くしたんだ。

やることがなくなった。
そろそろあの子に会いたい。


なんだろう、この感覚。
視覚があることが煩わしい。
なにも見たくない。
動くのも嫌だ。
なんといったかな?この感覚は。。















そうだ、疲れただ。
私は疲れたんだ。眠いんだ。

もういいだろう?
そろそろ、眠らせてくれ。









その日、世界で最後の命が息絶えた。





















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