乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
第25話 君が知らないだけ
家に帰っても私と天清(たかきよ)さんは仕事をしていた。
こんな必死になるのは生まれて初めてかもしれない。
お手伝いさん達もそれを察してか、コーヒーの入ったポットを夜食用に用意し、焼き菓子まで置いて帰ってくれた。
そのコーヒーを飲みながら、過去のフェア案を眺めた。
『漁港直送!お魚フェア!』
『大豆でキレイに!豆腐のヘルシーセット』
どれも勝負するには弱い気がした。

「フェア案、私の企画で大丈夫でしょうか」

「月子の企画でいいと俺は思ってるよ」

「ちょっと贔屓目じゃないですか?」

「そんなことない。月子ならできるよ。俺よりもね」

「そ、それは持ち上げ過ぎです!」

天清さんは書類に視線を落としたまま、落ち着いた声音で言った。
少しだけ懐かしそうな目をして。

「新崎にファミレスチェーンがあるだろう?新メニューがうまくいかない時期があって、そんな時、『楠野屋』が安定した売り上げを出してるって聞いて食べに行ったんだ」

「天清さんがうまくいかないことってあるんですか!?」
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