籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】

 神妙な面持ちをしていたからか、彼も険しい表情になっている。

「今日はありがとうございました。至らない場面も多々あったかと思いますが…フォローをしていただいて」
「当然だよ、君の夫になるんだから」
「その件なのですが、」

 私はすっと息を吐いた。


「昨日は本当にごめんなさい。和穂さんを傷つけた…」

 涙ぐむ私に近づく和穂さんは慌てた様子で駆け寄り両頬を包み込む。
強制的に顔を上げると、和穂さんの瞳の中に私が映っているのが見えて心底安心した。
あぁ、ちゃんとこの人の瞳に映っているのだと。


「どうしたんだよ、何かあった?あ、泊さんのこと?それなら何もない、彼女としっかり話したことはほぼない」
「違います、違うんです。昨日のことで、」
「昨日?それは君の本心だろう。謝る必要はない、それに俺の方こそ大人げない対応をしたと思って反省していたんだ。まだ出会って日が浅い。そう思うのは当然だ」
「違います、あの…私は、和穂さんのことが好きなんです」
「…え?」

声が掠れて震えている。たったそれだけを伝えるだけなのに。

「でもトラウマのせいであなたを傷つけるようなことを言ってしまった。後悔していました。それに私は和穂さんに出会って…その、本当に惹かれていて」
「それは、つまり俺と同じように思っているってこと?」
「そうです」

大きくて温かい手のひらで包み込まれる頬に涙が落ちた。
和穂さんの吃驚に満ちた顔は珍しい。そういう顔を見ることが出来るのは自分だけがいいという謎の独占欲もあった。

 和穂さんは何も言わずに私に顔を近づけキスをした。
軽く触れるだけのキスでも信じられないほどドキドキしている。


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