籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
♢♢♢

 秘書としても彼女は優秀だ。

まだ異動して一か月も経っていないというのに仕事が早い。
第一秘書である土浦の指導もいいのかもしれないが、人事部に配属されていた頃の評価通りの仕事ぶりだ。

 ただし、彼女の俺に対しての態度と他の男に対する態度が違うことが気に入らないことは多々ある。

特に土浦だ。
 
 雨の日、たまたま帰宅途中の二人を見たときは沸き起こる嫉妬を抑えるのに必死だった。
それに俺と一緒だと緊張していたり体が強張っていることがそれなりにあるのに土浦には自然な笑顔を向けている。

「気に入らない…」

 専務室で万年筆を指で回しながら、そう呟いた。


―昼休み


 普段ならば外食なのだが、この日は社員食堂を利用することになった。
理由は簡単だ。廊下を歩いているとたまたまはすみと土浦が一緒に歩いているのを見たからだ。

どうやら社員食堂へ向かっているようだ。
俺も初めて社員食堂を利用することにした。

 社員食堂は、当たり前だが社員で溢れておりそれなりの社員が利用しているようだ。
メニューを見ると確かに安い。

日替わり定食は600円だし、他のメニューも同じような値段設定だ。

悩むことなく日替わり定食を注文した。



本日の日替わりと黒色のボードに白のチョークで書かれたそれには、“白身フライ定食”と書かれている。
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