籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】

 待ち合わせ場所は恵比寿ガーデンプレイスだったから(職場から近い)比較的すぐに到着した。

 現実離れしたオーラを放つ和穂さんのことを思い出しながら空を見上げていると「待ったかな?」と声を掛けられる。

声のする方へ体を向けると仕立ての良いスーツ姿の和穂さんがいた。

「どうかした?そんなに驚くことかな」
「ごめんなさい…まさか本当に現れるなんて」

 和穂さんは余裕そうな笑みを浮かべ「俺から誘ったんだ、来るに決まってる」と言った。

 ドタキャンするような人には見えなかったが、ロンドンという異国の地で偶然出会った艶麗な男性が現れるなど、あまりにも非現実的に思えていた。
だからこうやって目の前に現れると酷く驚いてしまった。

 グレーのスーツ姿に汚れ一つない革靴、それから一瞬確認するように左手首から見えた腕時計はどれも高級そうに見えた。年齢は30代前半に見えるが、落ちついた雰囲気によってそれら高級品が浮くことはなく放たれるオーラに近くを歩くことを躊躇しそうになる。

 この感覚は何度か経験がある。
一般の人には出せないオーラだ。実家が規模の大きい会社を経営しているということもあり、大企業の社長や経営者らと会う機会が多かった。彼らの放つオーラは一般人とは圧倒的に異なる。
彼ももしかしたら何かの会社を経営しているのではと思った。
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