秘密と家族
看病
「おかえり」

タクシーで自宅に帰ると、エントランスホールで琉雨が待っていた。

「琉雨…!?」
「華秀から連絡があった。
寂しくて、琉梨を無理矢理呼び出したって」

「華秀くんがそう言ったの?」
「そうだよ。
……………でも、本当は違うよね?」
琉雨は琉梨を見据え、冷静に言った。

「え?」
「華秀が、琉梨の嫌がることをするはずがない。
“無理矢理”なんて、あり得ない」

「うん。私が、自分の意思で華秀くんのお家に行ったの。ただ、力になりたくて………
でもまた…結局……傷つけただけだった……」
琉梨の目が潤んで、涙が溢れた。

琉雨は静かに琉梨に近づき、包み込むように抱き締めた。

「琉梨、中入ろ?
身体、凄い冷えてる」
「うん…」

自宅に帰り、ベッドの中で琉雨に包まれるように抱き締められている琉梨。
目頭が熱くなっていた。

「琉雨、怒ってる?」
琉梨は琉雨の胸に顔を埋めたまま、窺うように言った。
「怒ってるよ」
「そう…だよね……ごめんね…」
「でも、琉梨の気持ちはちゃんと受け止めるよ。
華秀の事を思っての事だから…」
「うん…」

「琉梨」
「ん?」
「とりあえず今から寝て、それからは俺のお仕置き受けてね。明日は休みだし、琉梨は一日俺の言うこと聞いてもらうからね」
「う、うん…わかった。
……………でも、私から離れたりしないよね?」
「うん。大丈夫。
俺が!琉梨がいないと生きていけないって言ったでしょ?」

それからは二人は遅い眠りにつき、夜が明けて昼過ぎに目が覚めた。

「おはよ、琉梨」
「ん…」
「……って、もう昼だけどね」
「ん…ご飯、作らなきゃ……」
ゆっくり起き上がる、琉梨。

様子がおかしい。
「琉梨」
「ん?」
「ジッとして?」
琉雨の顔が近づいてくる。

「何!?」
「ジッとして!!」
琉雨は、額と額を合わせた。

「琉雨?」
「やっぱり……!琉梨、熱がある」
「え?そんなことないよ。大丈夫だよ」
「ダメ!!寝てて!!」
「でも、今日は琉雨の為に言うこと聞く日でしょ?
とりあえずご飯作るから。
お腹空いたでしょ?」

「琉梨!俺の言うこと聞いて!」
「うん…わかった」
おとなしく横になる、琉梨。

「なんか、作ってくるから。
ちゃんと寝てるんだよ?」
「わかった」

琉雨がお粥を作りベッドルームに戻ると、琉梨は眠っていた。
「やっぱり…また、上がったな……」
額に触れると、また熱が上がったようだ。

琉雨は、梨央に電話を入れた。

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