【完結】余計な愛はいらない。


 【すぐに使ってもいいか?】と聞いてくれる颯人の優しさに、いつの間にかわたしは救われている。

「ありがとうな、杏実。俺、本当に杏実のこと好きだわ」

 ニット帽を左手に抱えたまま、わたしをそっと抱きしめる颯人の温もりに、わたしはそれを受け入れることしか選ばない。

「……ねえ、颯人」

「ん?」

「わたしね、今すごく幸せだなって思うよ」

 こんなに幸せだと思えるのは、颯人のおかげでしかない。……わたしはそんな颯人に、いつも感謝している。
 颯人のことを信じてるからこそ、颯人のために何かしてあげたいと感じている。

「何言ってるんだ。俺の方が幸せに決まってるだろ?」

 そう言って颯人は、わたしの髪の毛とおでこにチュッとキスをしてくれる。

「……颯人、大好きだよ」

「俺も大好きだ。ずっと俺の隣にいろよ」

「……もちろんだよ」

 玲音との関係に悩んだ時から、もっと早く颯人と出会いたかったなと思っている。
 もしもっと早く出会えていたら、わたしはもっと幸せになれたのかもしれないって思った。

「杏実、俺は杏実の幸せそうな顔見てるのが、一番好きなんだからな」
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