僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~

トラブルだらけの出張

「気をつけてな」

「ちゃんとご飯食べてね」


「うん、わかった。じゃあ、行ってきます」

真夏の太陽の日差しがキツイ中、二人に見送られて家を出た。





全国8か所を三ヵ月かけてフェスごと回る一大野外イベント。
【u-Pudo・Tour】


移動式なので規模はそんなに大きくないけど、毎年すぐ売り切れてしまうこのイベントは、客層も幅広くとても人気がある。

ステージは全部で3つ。
5千人収容できるメインから、百数十人程度のサードステージまで大きさは三形態。

出演者もそうそうたる大物から、勢いがついてきたばかり新人まで幅が広い。
中には、コンテスト形式に選ばれるご当地のマイナーバンドやユニットもいる。

出演者だけでも毎回35組いて、月ごとに入れ替わる。

Tour全体を見ても沢山のスタッフや出演者が移動する大掛かりなイベントだ。
そのうちの三ヵ所、1/3前半戦。6公演をくっついて働くことになる。

いくつもの企業がスポンサーに入り、設営や運営、実行委員会などの企業が関わる中、今回うちの会社が請け負うのは、ステージ設営、運営自体に不備がないか、打ち合わせ通りに事が進んでいるかを管理する仕事。

大事なキーパーソンにも成り得る役回りだけど、ペーペーの俺は下の下の仕事。
ボランティアやバイトの子への指示伝えが主で、その子たちがスムーズに仕事ができるよう、目の前の不備をチームを組んで改善していく役回り。

小さな仕事に見えるけど、イベント全体をよく見ることができる重要な位置だと思ってる。

まあ、本音を言えば早くステージに関わる仕事をしたいと思ってるけど、ペーペーな俺はまだそのスタッフに選ばれていない。

俺の担当はセカンドステージまわり。
そこそこ人気があるグループがそこでライブをする。


スタッフの気のゆるみが事故やタイムスケジュールに影響しかねないから、運営側に雇われている身の立場として気を引き締める。


どんな小さな仕事だって真面目に向き合うため、マンションの玄関から出た時点で、甘えた自分をそこに置いてきた。

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