僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~

ありがとう さようなら

それから嵐のように時間が過ぎた。

プライベートな仕事に徹するはずだった彼の残された日数は、見事に俺の身支度やアップルの”輸出”手続きの為に消えていく。



「——俺ってやっぱ悪いやつだよな」

「どうしてですか?」

「結局さ、ここの家具売り飛ばしてるよね」

「あっはは、本当ですね」

「島くんはさぁ、付いていくのに不安とかないの?」

「自分から誘っておいて何言ってるんですか?」

「んー?どうして俺のことを信じてくれるんだろうって思ってね。心理を知りたくて」

「紫音から聞いてましたから、あなたのことを」

「紫音から?」


「はい。いつも自慢するように話してくれていました」

「———どんなこと言ってた?あいつ」


”馬鹿みたいに人を愛したいのに、バカみたいにそれが出来ない人”


「・・・手が器用で、好きなことには真っすぐで、成績も優秀なのに見当違いな職業について先生たちを泣かせた人」

「無茶苦茶だな、褒めてんのか、それ」


自称気味に笑って、家具を分解していた。

ふと俺が見ていないと思ったのか、右手の甲を左手で撫ぜてる。


「その評価で俺について行っても安心だって思ったの?」


「まあ、評価はそれだけじゃないです。———内緒です」

「———内緒か」


”感情に素直で嘘がつけない頑張り屋。本当は色んな人に好かれる大きな心の持ち主なのに、容姿のせいで妬みの対象になって苦労した人”


紫音がお兄さんの話をする時はいつも心なしか誇らしげだった。

きっと、凄く憧れを持っていて、信頼している人なんだなって思った。


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