客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

 二葉は匠にそっと口づける。

「……時間次第かな。チェックアウトの時間もあるしね」

 匠は二葉の言葉を聞くと、嬉しそうに微笑む。

「俺、高校の時に初めて付き合った子に『愛が重過ぎる』って言われたことがあるんだよね」
「どういう意味? 独占欲が強いとか?」
「うん、たぶん。二葉にも俺の重過ぎる愛をぶつけてないか心配」

 二葉は少し考えてから、匠の頬を撫でた。

「それは受取手次第なんじゃないかなぁ。私は重いというよりは……そうだな……深いっていう言葉が合うと思う」

 匠はまるで時が止まったかのように二葉を見つめた。

「……深い?」
「そう。匠さんは愛情深いのよ。だから私は愛されてることを実感出来るの」
「はは……そんなことを言ってくれるの、きっと二葉だけだよ……」

 その時、二葉はムクッと起き上がると、匠の体に覆い被さり唇を奪う。

「匠さんが可愛いから、空腹より……性欲が勝っちゃったじゃない……」
「そ、それって……」
「私の愛の方が重いかもしれない……」

 匠は体勢を入れ替え、二葉を組み敷く。

「二葉の愛なら大歓迎だよ」

 二人は貪るようにキスをし、熱く舌を絡ませていく。匠の手が二葉の体に触れようとした瞬間。

 部屋のチャイムが鳴る。

「ルームサービスをお持ちしました」

 二人は時間が止まったかのように固まると、苦笑いをした。


 
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