客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

 二葉はみんなと笑い合いながら、胸の(つか)えが取れたような気がした。私、ちゃんと匠さんのことを好きなんだ……。足りないと思っていた匠への恋心を肯定され、二葉はホッとした。

「そういえば来週末、社員旅行でしょ? 気になる人とかいないの?」

 京子が言うと、彩花と美玲は首を横に振る。

「社内はパス。面倒くさそう」
「私も。二葉の話を聞くだけで満足。京子は?」
「私は旅行を楽しむ」

 二葉は木之下の補佐だから、きっと匠と一緒にいることは叶わない。

 匠さんの周りには女性が集まりそう。

 そう考えるだけで切なくなる。

「あーあ、私の心を鷲掴みにしてくれるような人が目の前に現れないかなぁ。探すのは面倒くさいから」
「そんな簡単にいかないから恋は難しいのよ」
「そうそう」

 そう考えると、匠さんとの出会いと再会は奇跡みたいなもの。

 あと一割。彼と同じ八割好きって自信を持って言えるようになったら、その時はきちんと匠さんと向き合おう。
< 54 / 192 >

この作品をシェア

pagetop