客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
二葉の部屋の階に到着すると、二人は指を離す。先に降りた二葉が誰もいないことを確認して、匠に手招きをする。
距離をとりながら廊下を歩き、二葉がドアを開けて中に入ったのを見計らって、匠も部屋の中へ滑り込む。
匠は壁に寄り掛かって彼を見つめていた二葉を抱きしめ、激しくキスをした。貪るようなキスを繰り返し、二葉の体を抱き上げると布団まで運んで寝かせた。
なかなか終わらない口づけに、二葉は息が出来なくなる。
「匠さん……ん……苦しい……」
「……ごめん……昼間から我慢してたから……」
すると二葉は笑いながら匠を抱きしめた。
「匠さんってば相変わらずなんだから……でもそういうところが大好きなの……」
二葉の言葉に匠は時が止まったかのように動けなくなる。
今二葉はなんて言った?
匠は顔を上げると、二葉の表情に見入る。酒のせいか、上気した肌、そして艶っぽい笑顔。
二葉は匠の頬に手を添え、優しく撫でていく。
「ずっと待たせちゃってごめんなさい……匠さんのことが好き、愛してる」
あまりの嬉しさから、匠の頬を一筋の涙が落ちる。それを二葉がキスで掬い上げる。
「俺も二葉が好きだよ……この世で一番愛してる……」
二葉は匠の頭を引き寄せ、唇を重ねていく。しかし匠の手が浴衣を脱がそうとすると、二葉に止められてしまう。
「……今日はダメ……みんないるし……帰ってからにしよう?」
「わかった……」
早く二葉をこの手に抱きたい……それでも匠はようやく二葉の口から聞けたこの言葉を胸に刻みつけた。酔っていたから覚えてないなんて言わせない。
舌を絡ませながら、濃厚なキスを繰り返すうちに、二葉の反応がなくなる。彼女を見ると、気持ちよさそうに寝息を立てていた。
あまりにも可愛らしい寝顔に匠は吹き出した。そっと布団をかけ、最後にもう一度キスをする。
「おやすみ……」
そう声をかけると、匠は部屋を後にした。