まどかな氷姫(上)~元妻は、愛する元夫からの愛を拒絶したい~
「抵抗するんじゃないわよ!」
「いやいやいやっ!するだろ普通!!」
必死になって首を振り、耳や首元まで赤くしながら、まどかは私の手の動きを阻むように残り三つほどのお腹あたりのボタンを握りしめ、外させまいと抵抗してくる。
「まじでやめろって!てか俺の上から降りろっ!!やばいだろ!いろいろ!!」
「なにがやばいってのよ!怪我がないか確認するだけよ!!」
「怪我なんてしてないっつってんだろ!」
「だったらさっさと見せてくれればいいでしょおっ!?」
「ばっ、おま…、変態かよ!!」
そうこう言い合っている間に、体勢的にも有利だった私に軍配が上がる。
彼の最後のボタンをはずし終え、シャツをそのまま開いて胸元をはだけさせた。
そこには、……なんとも痛々しい、血が滲んだ包帯が。
「………あれ?」
……巻かれていたわけでもなく。
むしろ。
「ぶふっ!」
「うっわ!?」
女性よりも真っ白な綺麗な肌。
余計な肉も脂肪もない、細く、しかし腹筋がはっきりと分かる引き締まった肉体。
怪我一つない、まるで彫像か何かのように美しい、けれど男らしい上半身。
私は、まるで太陽を直視してしまった愚かな人間のように一瞬目の前が真っ白になった。
……いくら元夫とはいえ、見なくて久しい裸を見てしまえば、当然の反動だ。
つまりは、頭が一気に沸騰して、鼻血が出た。
「これ、俺の血じゃなくて、あんたの血だよ!馬鹿!」
「な、なんと……」
(道理で…)
驚きの事実を知るとともに、慌てて鼻を両手で押さえるが、ふさぎ込めなかった血が数滴、指の隙間から漏れて、彼の白いお腹の上に落ちてしまう。
「…ぁ…っ」
耳に届いた、何かに堪える吐息。
(やば…)
それはそうだ。
わたしの血は氷みたいに冷たい。
体温の低い生き物を凍らせるのは容易いほどに。
見れば、そこには。
上気した頬、震えた吐息を漏らす赤い唇、悩ましげに眉を寄せてこちらを見上げる、微かに涙が浮かんだ薄茶の瞳。
白い肌に、赤い華の如く血が散って、背徳的以外の何物でもない。
あまりにも淫靡なその姿に、私は脳内で叫んだ。
(ガチでR18なやつー!!!!)
精神年齢30を優に超えるおババな自分が、仮にもぴちぴちな高校生である彼に何という姿をさせてしまったのかと、悶絶する。