まどかな氷姫(上)~元妻は、愛する元夫からの愛を拒絶したい~
「…………夢?」
「人様登場させてなんつー夢見てるんだっ、お前!!」
まだぼんやりとした頭を摩りながら、私は倒していた上体をゆっくりと起き上がらせた。
霞む目を凝らせば、そこは誰もいない教室だった。
窓の外を見るに、もうとっくに夕方だ。
「……何してたんだっけ?」
「クラス委員の集まりだろうが」
「……クラス委員」
記憶を掘り起こし、思い出そうとする。
そう、確かにそうだ。
……私はいつの間にかクラスの副委員長に任命されていたのだ。
もちろん、同意なんてしていない。
(爆睡はしていた。)
知っていたら、以前まどかに同情なんてしなかったはずだもの。
(で、肝心の委員長がバックレて、担任の先生に私が連行されて…)
私が会議に使う教室に入った時、まどかからはもちろん、
『は?これから会議だから部外者は出て行って』
という、はなっからの戦力外通知を貰った。
仕方なく私が隅っこの席で筆記用具とルーズリーフを出して呼吸していたら、気づけば会議は終了していた。
………その間何をしてたかって?
話も聞かず、メモも取らず、ただただまどかを見つめていましたが、何か。
黙々と先生の話に耳を傾け、ペンを走らせていた彼。
時折私の熱視線を感じたのか、慌てて顔を上げて辺りを見渡し、私と目が合うなりオバケを見たように蒼くなって顔を背けていたっけ。
「おい、痴女。仕事は終わったのか」
にまにまと思い出し笑いをしていた私に、まどかは冷たい視線を向けて尋ねてきた。
当然、首を振る私。
……ていうか、あのまどかから、痴女って罵倒はとても新鮮。
私は頬杖をついて訊いた。
「ねぇ、まどか。なんで私だけ手伝ってくれなかったの?」
「はぁ?」
不機嫌そうに眉を寄せるまどかに、私は唇を尖らせて言った。
「だって、他の子たちは先に帰してあげていたじゃない」
「………」
まどかの目が逸らされる。怪しい。