京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
5. 四ノ宮家

1. 歴史


 ──表の東郷、裏の四ノ宮

 江戸時代から続く両家の関係は至極シンプルで、昔代官職にあった東郷が四ノ宮を手下として遣い始めたのが始まりだ。
 十手持ちから始まり、諜報、暗躍、多くに関わる四ノ宮には、しかし危険もついて回った。

 始まりは一軒の宿屋。
 そこを隠れ蓑に四ノ宮は東郷の影で生きてきた。
 しかし彼らが東郷を助けるのは、四ノ宮が表に出る事を嫌う一族だったからだ。それは自分たちが持つ能力が厄介事を呼び込むと知っていたから。

 東郷はそれを天啓と呼んだ。
 広い視野と想像力を持つ才能の持ち主。
 今でいうなら知能指数の話であるのだが、四ノ宮はそれを度々排出する家系だったのだ。
 
 黙していれば目立つ才能では無い事から、隠す事は容易だった。四ノ宮は表向き宿屋を営む町人として、政治の裏舞台を歩いた。

 やがて代官御用達の宿屋は政治に密接した空間となってゆく。それを使い四ノ宮は時の流れを敏感に感じ取り、藩を救い、領主を助けた。
 そうして噂が帝の耳に届き、東郷は京で権力を担っていく。四ノ宮はそれに付き従う。
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