京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

3. 慣例


 翌日、史織は三芳に呼ばれた。
「警察で事情聴取というのも、あなたには辛いでしょう」
 それに旅館としては、被害者がお客様では無いのなら、可能な限り穏便に済ませたい筈だ。

 ──と、史織は考えていたが、研修を利用している会社の責任者は警察に呼び出され、その他の社員も今朝慌ただしくチェックアウトして行った。
 旅館の対応に不満を口にする者もいたが、自社社員の不祥事だ。怒りは事故を起こした社員に対するものだと、仕方なしと応じる者が殆どだったようだ。

 いずれにしても旅館側がお客様でなく、被害者とはいえ従業員を守った事が意外だった。
「あ、あの……」

 それにずっと気になっていた事がある。
「私、その……」

 名前だ。
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