京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

 ふと過ぎる嫌な予感。
 昂良は、朔埜が千田 史織に執心している事を知っている。千田と縁を結ぶなら、自然と史織にも近くなる。
(つまりそういう事か?)
 ──弱み、という単語が頭を過ぎる。

 鼻息荒く昂良を睨めば、弟は、おーこわ。と戯けた風に両手を上げた。

「ただの政略結婚だって。仕方ないって事くらい兄さんだって分かると思うけどなあ、立派な後継者になるのは四ノ宮の為、お祖父様の為なんだから。だろ、兄さん?」
「……んな事は言われなくても分かってる」

 自分が四ノ宮の後継者の資質を持つと知った時、継ぐと頷いた時の祖父の顔は今でも忘れられない。
 安心して隠居して欲しい。代々受け継ぎ守ってきた理を、自分の代で全うし、必ず次代へ繋ぐのだと。……そう決意したのだから。

 その為に乃々夏との結婚は朔埜には必要なのだ。
 愛情だって必要なら育めばよい。
 それだけだった……
 史織と会うまでは──
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