京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

8. 卑怯者


「婚約者を蔑ろにするような人ですよ、史織さん。そんな奴の背後に隠れているあなたも、卑怯ですね」
 ぎくっと身体が強張る。
「おい──」
「本当の事ですよ、決まった相手がいるのに違う人に粉を掛けるのは不貞と言うんです。史織さん、あなたは僕の婚約者なんですよ、いい加減我儘を言うのは止めて下さい」

 手を伸ばす昂良が目に入り、朔埜の背中で嫌々と首を横に振る。
「……お前が俺の周りを何か探ってんのは知ってたけどな。史織にちょっかいを出すような真似をしてくるとは思わんかったわ」
「僕が誰を手にしようと兄さんには関係ないでしょう。あなたは今迄のように与えられたものをありがたがっていればいいんです」

「お前は馬鹿か」
 そう言われて初めて昂良はやっと朔埜に目を合わせた。
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