京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

「……勘違いする」
「へ……?」
 驚いている姿を、追い詰めたくなる。
「史織」
 じっと見つめれば息を飲む史織に苦笑してしまう。それを線引きしておかないと、無理を通してしまう。その結果困るのは史織だから、自制しないといけない。
 
「……あの、若旦那様は……私の名前を知っていましたよね……」
 けれど史織の反応は別のものだった。思わずその名を口にしてしまう。
「──史織?」
「私は、西野 佳寿那と名乗っていました……」
「……ああ」

 そういえばそうだった。

「知ってた、けど……住み込みで働きたいって人にはそれぞれ事情がある事が多いんや。最低限の身元調査をして犯罪者じゃなければ特に問題はない。じいさんも三芳も知ってる」
「……そうなんですか」

 ぽかんと言うかホッというか。史織のそんな表情も悪くないけれど、もしかしたら罪悪感に苛まされていたのかもしれない。それならもっと早くに告げてやれば良かったと自省する。
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