京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

 史織はちらっと直樹を見て、ベッドから足を下ろした。
 歳の近い従姉が結婚すれば、間違いなく自分はどうだと聞かれる事になる。何が嫌ってそれが嫌なのだ。
 世間話の一環ではあるし、仕方がないといったらそうなのだけど。

 そう考えると、麻弥子のお見合いに関わらせるのが、母が史織の結婚意識を刺激する為のものでは、なんて勘ぐりも出てくる。

(だとしたらお母さんの思惑通りね、大したもんだわ)

「リビングに置いてあるよ、お饅頭ね」
「やったー、後で食う……で、姉ちゃん。母ちゃんに言われた?」
「……え」
 どきりと胸が跳ねる。
 まさか直樹に潜入捜査の件を話したのだろうか。
 直樹は特に旅行好きという訳ではないが、旅館のプレミアムチケットと聞いたら行きたいと言い出すかもしれないじゃないか。
 わたわたと焦る史織に気付く様子も無く、直樹はあははと口にする。

「姉ちゃんが結婚なんてさ、まだ早いよなあ」
「……はい?」
「お見合いするんだろ? 住み込みで」
 首を傾げる直樹を、史織は思い切り凝視した。
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